る仕組み
これらの低リスク物質については、企業が保有する営業秘密の保護を目的として、
**化学名の一部を省略または置換した「代替化学名」**や、厚生労働省令で定める事項を通知すれば、正式な化学名通知に代えることが認められます。
これにより、リスクアセスメントに必要な情報を確保しつつ、企業の知的財産を守ることが可能になります。
③ 法的根拠と整合
根拠は改正法による労働安全衛生法第57条の2第3項および整備省令後の労働安全衛生規則第34条の2の6の2(仮)。告示で具体的な対象物質を定め、適用範囲を限定する形をとります。
実務への影響・企業の対応策
本告示は、化学物質を扱う製造業・輸入業・研究開発部門など幅広い業種に影響します。
企業は以下の準備が求められます。
- 通知対象物(約2,900物質)の棚卸しとリスク区分の確認
→ 特別規則対象・GHS区分を基に「低リスク通知対象物」に該当するかを判定。 - 営業秘密該当性の検討
→ 化学構造・組成が企業固有の技術情報である場合は、代替化学名での通知を検討。 - 安全データシート(SDS)・ラベルの更新
→ 代替化学名を記載する際は、法的要件(代替名、含有範囲、危険性評価情報)を正確に反映。 - リスクアセスメント継続の担保
→ 化学名を伏せても危険有害性の判断が可能な情報提供体制を整備。
また、代替化学名の使用を希望する場合、事前届出や審査手続きが導入される可能性があり、運用指針の確認が必要です。
施行時期と今後のスケジュール
- 公布日:2025年12月下旬(予定)
- 適用開始:2026年4月1日
今後、厚生労働省はガイドラインやFAQを整備し、GHS分類・SDS更新との整合を図る見込みです。企業は2025年度内に物質リストの整理と社内手続の整備を完了しておくことが推奨されます。
まとめ
本告示案は、「化学物質の情報開示」と「営業秘密保護」を両立するための新制度です。リスクの低い通知対象物に限定して代替化学名での届出を認めることで、産業界の機密保持と法令遵守を両立します。化学物質管理の自律的運用が進む中で、企業は情報管理体制とSDS運用を再設計する必要があります。
出典:厚生労働省「労働安全衛生規則第三十四条の二の六の二の規定に基づき厚生労働大臣が定めるもの(仮称)案について(概要)」(令和7年10月)