2026年10月1日施行予定の「労働施策総合推進法等の一部改正」を受け、政府は関連政令の整備を進めています。本政令案では、カスタマーハラスメント(カスハラ)防止義務や求職者等へのセクハラ防止措置義務を怠った事業者が、ハローワークや船員職業安定所の求人申込み不受理の対象となるよう規定が見直されます。
企業の採用活動に直結するため、経営者・人事担当者は施行前に体制整備を進める必要があります。
改正の背景
令和7年法律第63号(労働施策総合推進法等改正法)により、
- カスタマーハラスメント防止措置義務の創設
- 求職者等へのセクハラ防止措置の強化
- 相談協力者に対する不利益取扱いの禁止
などが新たに法律上明記されました。
これに伴い、企業が義務違反を行い行政による「公表等の措置」を受けた場合、求人受理を拒否できる仕組みを政令で整備する必要が生じ、今回の政令案が示されています。
改正の主なポイント
① 求人申込みの不受理対象に「カスハラ対策義務違反」を追加
(職業安定法施行令の改正)
職業安定所は原則すべての求人申込みを受理しますが、法律違反により行政処分(公表等)を受けた事業者は例外として受理拒否が可能です。
今回、新たに以下の規定違反も不受理対象に追加されます。
- カスタマーハラスメント防止措置義務(労働施策総合推進法33条1項)
- カスハラ相談への協力者への不利益取扱い禁止(同条2項)
- 求職者等へのセクハラ防止措置義務(男女雇用機会均等法13条1項)
- セクハラ相談協力者への不利益取扱い禁止(同条2項)
これにより、ハラスメント対策の不履行=採用活動の制約という実務影響が生じます。
② 行政手続法の例外規定も改正し、カスハラ指針を追加
行政手続法では、意見公募手続(パブリックコメント)が不要となる命令等の類型を政令で定めています。
今回の改正で、以下が追加されます。
- カスハラ防止措置に関する指針
- 求職者等に対するセクハラ防止措置に関する指針
これにより、ハラスメント関連指針は迅速に改定できる体制が整えられます。
③ 船員職業安定法でも同様に「不受理対象」を拡大
船舶業界特有の職業安定制度でも、ハラスメント対策義務違反が不受理対象に追加されます。
人材確保が課題となる海運業界においても、ハラスメント対策の実効性が求められます。
④ 労働政策審議会の所掌事務に「カスハラ指針」を追加
労働政策審議会令の改正により、雇用環境・均等分科会の所掌に
カスハラ防止指針の審議
が正式に追加されます。
政策形成プロセスにおいても、カスハラが独立した検討対象となります。
実務への影響・企業の対応策
今回の改正は、単なる法規定の修正にとどまらず、企業の採用活動・人事労務管理に直接影響します。
求人不受理リスクの高まり
行政措置(公表)が行われた場合、
- ハローワーク
- 船員職安
による求人掲載が拒否される可能性があります。
採用力低下は避けられないため、ハラスメント対策の実効性確保が必須です。
対応すべき具体策
- カスハラ・セクハラの相談窓口の再整備
- 相談対応の記録管理の明確化
- 相談協力者への不利益取扱い防止の社内ルール化
- 就業規則・ハラスメント規程の改定
- ハラスメント研修の義務化と記録保持
これらが行われていない企業は、施行までに整備が必要です。
施行時期と今後のスケジュール
- 公布予定:2026年5月
- 施行日:2026年10月1日(改正法の施行日)
指針・通達類は今後順次示される予定であり、企業は最新情報を継続的に確認する必要があります。
まとめ
今回の政令改正は、カスタマーハラスメント・セクシュアルハラスメント対策を「企業の採用要件」に直接結びつける重大な改正です。
違反した企業は求人不受理という深刻な影響を受ける可能性があり、今後の採用戦略や労務管理においてハラスメント対策は不可欠な基盤となります。
施行まで1年未満であるため、企業には早急な体制整備が求められます。
出典:厚生労働省「関係政令の整備に関する政令案【概要】」(令和8年施行予定)