2025年12月12日施行予定の省令改正により、建設業法施行規則および「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(入契法)」施行規則が大きく見直されます。
今回の改正は、2024年の建設業法等改正(令和6年法律第49号)を受け、低価格入札における「正当な理由」や、公共工事に不可欠な経費(法定福利費・安全衛生経費・退職金共済掛金)を明文化するものです。
これにより、建設現場における適正価格の確保と、労働者の安全・福祉向上が一層重視される方向に進みます。
改正の背景
長年問題とされてきた「ダンピング受注(著しく低い請負価格)」や、「労務費・安全費の不足による現場環境の悪化」に対応するため、2024年の法改正では、建設業法と入契法の双方で“適正な施工の確保”が明記されました。
国土交通省はその具体的な運用を省令で定め、低価格入札を防止しつつ、労働者に必要な経費を確実に反映させる仕組みを整備する方針です。
改正の主なポイント
① 「通常必要と認められる原価を下回る契約」の正当な理由を明確化
(建設業法施行規則第13条の11関係)
建設業者が「原価を下回る請負金額」で契約を結ぶ場合、その正当な理由を次の3つに限定します。
- 自社保有の低廉な資材を使用できる場合
- 先端技術や技能により原価低減が合理的に図られている場合
- 緊急性や不可避の事情がある場合(災害対応など)
この明確化により、単なる価格競争目的の「不当な低価格入札」が抑制されます。
② 労働者の適正施工に不可欠な経費を明文化
(建設業法施行規則第13条の12および入契法施行規則第1条関係)
建設現場で確保すべき「不可欠な経費」として、以下の3項目を明確化。これらは見積書や入札金額内訳書に明記する必要があります。
- 法定福利費(健康保険・厚生年金・雇用保険など事業主負担分)
- 安全衛生経費(ヘルメット・安全教育・保護具・健康診断費用など)
- 建設業退職金共済掛金(建退共制度に基づく掛金)
これにより、元請・下請を問わず、**「人件費相当部分を確実に反映させた見積り」**が求められるようになります。
③ 登録基幹技能者講習修了証の様式削除
従来の様式(別記第25号の8)は廃止。修了証の記載事項は省令で細かく定めず、柔軟に運用できる形へ変更されます。これにより、デジタル証明書化などの運用改善も想定されています。
④ 保存義務図書の追加
(建設業法施行規則第26条第5項)
新たに以下の2つの文書が「保存義務のある営業関係書類」に追加されます。
- 材料費・労務費等を記載した見積書(または写し)
- 注文者との見積り内容に関する打合せ記録
これにより、契約前の価格交渉過程を書面で明確に残すことが求められ、後日のトラブル防止や監督強化につながります。
⑤ 地方整備局への権限委任の拡大
建設業法第40条の4に基づく調査権限を、地方整備局長および北海道開発局長にも付与。地方現場での監督・是正指導が迅速化されます。
実務への影響・事業者の対応
今回の改正は、元請・下請・専門工事業者を含めた契約・見積・経費管理体制に直結します。
企業が今から準備すべきポイントは以下のとおりです。
- 見積書様式への**「法定福利費」「安全衛生経費」項目の明示化**
- 取引先との見積り打合せ記録の保存体制(電子・紙双方)整備
- 原価低減理由を証明できる技術資料や保有資材台帳の整備
- 労働者の安全・健康管理コストを確実に反映した見積基準書の更新
特に入札参加企業は、内訳書への「不可欠経費」の記載漏れがあると審査で不利になる可能性があるため注意が必要です。
施行時期とスケジュール
- 公布予定:2025年12月上旬
- 施行日:2025年12月12日
(ただし、登録基幹技能者講習修了証に関する改正は公布日施行)
まとめ
今回の改正は、「人を守る原価管理」への転換を明確に打ち出すものです。
建設業における適正価格・適正労務の確保が制度面から後押しされる一方、事業者には経費の透明化・証拠化が求められます。
元請・下請を問わず、法定福利費や安全衛生費を反映した見積・契約のルール整備が急務です。
出典:国土交通省「建設業法施行規則及び入契法施行規則の一部を改正する省令案(概要)」令和7年11月