厚生労働省は2025年12月下旬の公布を予定し、「国民年金基金令」および「確定拠出年金法施行令(DC令)」の一部を改正します。
今回の改正は、2025年度税制改正大綱および令和7年法律第74号(国民年金法等改正法)を受けたもので、iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入年齢引き上げ(70歳未満まで)や拠出限度額・掛金上限の見直しなどが盛り込まれています。
高齢期の就労が進む中、老後資産形成を柔軟に支援する制度設計への転換が進められています。
改正の背景
令和7年度税制改正大綱(2024年12月閣議決定)では、確定拠出年金制度の拠出限度額や国民年金基金の掛金上限を見直すことが示されました。
さらに、同年成立した「国民年金法等の一部を改正する等の法律(令和7年法第74号)」により、iDeCoの加入可能年齢の引き上げや**加入区分の新設(第5号加入者)**が決定しました。
これらを踏まえ、政令レベルで制度詳細を整備するのが今回の改正です。
目的は次の3点に集約されます:
- 国民年金基金・確定拠出年金の掛金上限や拠出方法の見直し
- iDeCoの加入範囲拡大(第5号加入者制度の新設)
- 改正前制度における経過措置の整理と整合性の確保
改正の主なポイント
① 国民年金基金の掛金上限を見直し
(国民年金基金令の改正)
令和7年度税制改正に基づき、国民年金基金における掛金の上限額を引き上げ。
これは、自営業者・フリーランスなど第1号被保険者層の老後資産形成余力を拡大する狙いがあります。
なお、本政令施行前に発生した掛金については、経過措置により新上限の適用対象外となります。
② iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入年齢を70歳未満に引き上げ
(確定拠出年金法施行令(DC令)の改正)
令和7年改正法でiDeCoの加入可能年齢が60歳未満→70歳未満に延長されることに伴い、DC令でも加入方法・拠出ルールを整備します。
特に新設される**「第5号加入者」制度**が注目されます。
第5号加入者とは
改正前制度では加入できなかった60歳以上70歳未満のうち、次のいずれかに該当する者:
- 過去にiDeCo加入者または運用指図者であった者
- 企業型DCからiDeCoへの資産移換を申出た者
- 確定給付企業年金・企業年金連合会からiDeCoへの移換申出者
これにより、60代後半でもiDeCoによる資産運用・移換が可能となります。
公的年金に上乗せする形で、より長期的なライフプラン形成を支援する仕組みです。
③ 拠出限度額の見直し
(DC令第20条・第68条関連)
確定拠出年金制度全体での拠出限度額が見直され、企業型・個人型双方で上限調整が行われます。
これにより、制度間の公平性を確保しつつ、多様な就労形態に対応した拠出制度が実現します。
④ 経過措置の明確化
施行日前に支払われた国民年金基金の掛金について、新上限を遡及適用しないよう経過措置を設けます。
また、旧DC法第62条第2項で定められていた「老齢を支給事由とする年金給付」の規定削除に伴い、関連政令(DC令第34条の3など)も整理されます。
対象となる主な政令
- 国民年金基金令(平成2年政令第304号)
- 確定拠出年金法施行令(平成13年政令第248号)
- 厚生年金保険法改正に伴う経過措置政令(平成26年政令第74号)
施行時期と今後のスケジュール
- 公布予定:2025年12月下旬
- 施行日:2026年12月1日(令和8年)予定
本施行に合わせて、iDeCo運営機関や年金基金が加入・拠出システムの改修を行う予定です。
加入希望者は、実際の申込み受付開始時期(2026年秋頃見込み)を確認する必要があります。
実務への影響・対応策
- 企業年金やDCを導入する企業は、iDeCoとの制度併用可否を再確認
- 自営業者・個人事業主は、国民年金基金とiDeCoの併用上限を見直す必要あり
- 金融機関・運営管理機関は、第5号加入者向けの商品設計・加入ガイド改訂が必要
- 高齢加入者層への説明体制整備や、掛金限度額変更に伴う税務処理対応も求められます。
まとめ
今回の政令改正は、働く世代の多様化と長寿化に対応した**「人生100年時代の年金設計」**の一環です。
iDeCoの加入範囲拡大により、定年後も自助努力で老後資金を積み立てられる環境が整います。
一方で、制度の重複加入・上限管理には注意が必要です。今後は、施行に向けた詳細ガイドラインや告示内容にも注目が集まります。
出典:厚生労働省 年金局「国民年金基金令等の一部を改正する政令案について(概要)」令和7年11月