2024年5月に公布された「民法等の一部を改正する法律(令和6年法律第33号)」を受け、戸籍法施行規則の一部改正が行われます。これにより、離婚後の親権を「父母双方」または「一方」と指定できるようになることに伴い、離婚届の様式や記載事項が大幅に変更されます。本改正は、共同親権制度の導入に合わせたもので、離婚時の親の合意内容や子の養育に関する取り決めをより明確にすることを目的としています。
改正の背景
2024年の民法改正により、これまで「単独親権」が原則だった離婚後の親権制度が見直されました。改正法では、家庭裁判所の判断により「父母双方が親権を行う」ことが可能となり、共同親権が新たに導入されます。
この制度変更に伴い、戸籍に記載する情報や離婚届に必要な確認項目を整備するため、戸籍法施行規則の改正が行われるものです。これにより、離婚届における親権・養育関連の記載義務が明確化され、行政手続上の整合性が図られます。
改正の主なポイント
① 離婚届用紙に新しい記載欄を追加
新様式の離婚届(附録第13号様式)には、以下の新しい記載欄が追加されます。
- 「父母双方が親権を行う子」欄
離婚後、共同親権を選択する場合に記載します。 - 「親権者の指定を求める家事審判・家事調停申立中の子」欄
親権の確定前に提出される場合を想定しています。 - 「親権の行使方法への理解と合意確認チェック欄」
「共同」または「単独」で親権を行使することの意味を理解し、真意に基づいて合意しているかを確認するためのチェック欄。 - 「親子交流・監護・養育費取決めの有無」欄
子の養育に関する具体的な取り決めの有無を明記するよう求められます。
これらにより、離婚時の父母間の合意内容を明文化し、後の紛争防止を図ります。
② 離婚届書の記載事項の追加
戸籍法施行規則第57条第1項に以下の内容が追加されます。
- 親子交流・監護・養育費の分担に関する取決めの有無
- 養育費の取決めがある場合、その契約が公正証書かどうかの別
- 共同親権または単独親権の選択にあたっての理解と真意の確認
これにより、法務局・家庭裁判所・市区町村役場が離婚後の子の福祉を的確に把握できる体制が整備されます。
③ 戸籍電子証明書の活用範囲を拡大
今回の改正では、戸籍電子証明書(電磁的記録)の利用範囲も拡大されます。
不動産登記法の改正に合わせ、相続人申出制度(第76条の3)や所有不動産記録証明書(第119条の2)に関する手続で、戸籍情報を電子的に照会・確認できるようになります。
これにより、相続登記や不動産関係手続のデジタル化がさらに進む見込みです。
実務への影響・担当者の対応策
今回の改正は、家庭裁判所・市区町村・法務局などの行政実務だけでなく、法律実務家・自治体職員・行政書士にも影響します。
- 離婚届様式が変更されるため、自治体窓口での案内文書・記入例の更新が必要。
- 共同親権選択時には、親の理解と合意の確認が求められるため、説明体制の整備が重要。
- 養育費や親子交流の取決め有無を明記することから、家庭裁判所・公証役場との連携が強化される。
- 戸籍電子証明書の導入により、相続・登記手続のオンライン連携が進むため、システム対応の準備も求められる。
施行時期とスケジュール
- 施行日:民法改正法の施行日(2024年施行予定)
- 戸籍電子証明書に関する改正部分:2026年2月2日施行予定
離婚届の新様式は改正法施行日から適用される見込みであり、実務現場では早期の準備が求められます。
まとめ
今回の戸籍法施行規則改正は、共同親権制度導入に伴う実務対応の要です。
離婚届様式の刷新によって、親権の取り決めや養育内容を明確に記載する必要が生じ、親の責任と理解を確認する仕組みが導入されます。
また、戸籍電子証明書の利用拡大により、今後の行政・登記手続のデジタル化も加速します。
各自治体・法律実務担当者は、施行前の説明体制とシステム整備を早急に進めることが求められます。
出典:法務省「戸籍法施行規則の一部を改正する省令案の概要」(令和6年)