厚生労働省は、2027年国際園芸博覧会(GREEN×EXPO 2027)の開催に伴い、同博覧会の関係者とその配偶者・子が「特定活動」で在留する場合、国民健康保険(国保)および後期高齢者医療制度の適用を免除する省令改正案を示しました。自国の公的医療保険等で既に保障を受けるケースとの二重適用・二重負担を避けるのが狙いです。公布は2025年12月上旬、施行は公布日。適用は2028年3月31日までの時限措置です。
改正の背景
国保・後期高齢者医療は「国内に住所を有する者」を原則被保険者とし、在留資格を満たす外国人も対象としてきました。しかし、博覧会関係者の中には自国制度の保障が継続する者も想定され、国保等を重ねると保険料負担が二重化します。これを避けるため、関係者と家族が特定活動で在留する間は国保・後期の適用を除外する必要があると判断されました。
改正の主なポイント
適用除外(国保・後期)の明記
国保施行規則に附則条文(第5条)を新設し、2028年3月31日まで、博覧会の関係者およびその配偶者・子の特定活動在留者を国保の適用除外とします。後期高齢者医療施行規則にも整合する附則(第28条)を新設。
届出により国保加入を認める例外運用
もっとも、当該世帯について、住所取得等から14日以内に所定の届出を行う場合には、都道府県(市町村と共同実施)の国民健康保険の被保険者とできる規定を設けます。家族の中に国保や後期の被保険者が生じた場合の取扱いも併せて整備され、世帯単位での齟齬を避けます。
根拠条項の整理
国保法第6条第11号、高齢者の医療の確保に関する法律(高確法)第51条第2号を根拠に、省令附則で対象と期間を限定した適用除外を実装します。
実務への影響・企業の対応策
博覧会運営・参加企業、受入れ団体、自治体の国保担当は、在留手続・住民登録と保険手続の時系列を揃える必要があります。
まず、受入れ時に「特定活動(博覧会)」の在留資格と自国保険の有無を確認し、国保・後期の適用除外を原則として案内します。世帯で日本の保険加入を選ぶ場合は、住所取得後14日以内の届出が条件となるため、渡航・住居確定から保険窓口案内までのフローをパッケージ化して遅滞を防ぐことが重要です。
自治体は、共同実施国保の加入可否、世帯内での混在状態の解消ルール、後期該当者が生じた際の連携(広域連合との情報共有)を明文化。英語等の説明様式やFAQを整備し、二重負担・未加入のいずれも発生しないようにします。受入れ企業は、入国・住民登録・保険・給与控除・医療費請求の連絡票を一本化し、本人・配偶者・子のステータス変動(転入出、在留更新)に合わせてアップデートする体制が求められます。
施行時期と今後のスケジュール
公布は2025年12月上旬(予定)、施行は公布日。国保・後期の適用除外は2028年3月31日までの時限措置です。自治体・受入れ団体は2025年度内に手続書式と案内文、英語版FAQ、届出から資格付与までのSLAを確立し、2026年度はトライアル運用でボトルネックを洗い出すのが実務的です。
まとめ
本改正は、国際イベントに伴う在留者の医療保障の重複・二重負担を避けるための限定的・時限的な制度調整です。適用除外を原則に据えつつ、世帯の実情に応じた加入経路も確保することで、被保険者・自治体双方の事務負担とリスクを低減します。受入れ企業・自治体は、在留・住民・保険の3手続きを一体管理し、14日以内の届出と世帯単位の整合を徹底しましょう。
出典:厚生労働省「国民健康保険法施行規則及び高齢者の医療の確保に関する法律施行規則の一部を改正する省令案について(概要)」