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【2026年2月以降順次施行】食品中残留農薬の基準を見直し。イソチアニル等6品目の基準改正と「アセチルシステイン」を一律基準の対象外物質に

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消費者庁は、食品中の残留農薬等に係る基準を見直す告示案を公表しました。対象はイソチアニル、クロフェンテジン、シクロピラニル、チオベンカルブ、バリダマイシン、ブロフラニリドの計6品目で、食品ごとの残留基準値(MRL)が更新されます。あわせて「アセチルシステイン」を食品衛生法第13条3項の“一律基準(0.01ppm)”の適用対象外物質に追加します。食品メーカー、輸入事業者、流通・小売、農業者は、2026年2月以降の施行に向けて規格・検査・調達の見直しが必要です。

目次

改正の背景

食品衛生法は、食品ごとの残留基準が定められていない農薬等については、一律に0.01ppmを超える残留を認めない仕組みを採っています。他方、国際基準の動向や国内外の使用実態の変化、食品安全委員会の健康影響評価の結果を踏まえ、食品ごとの基準(MRL)を適切に設定・更新し、貿易や実務に即した管理を図っています。今回の改正案は、2025年7月8日および9月17日の審議で了承された内容を反映し、基準の国際整合と実効性を高めるものです。

改正の主なポイント

イソチアニル等6品目の残留基準を改正

対象は次の6品目です。
・イソチアニル(農薬)
・クロフェンテジン(農薬)
・シクロピラニル(農薬)
・チオベンカルブ(農薬)
・バリダマイシン(農薬)
・ブロフラニリド(農薬・動物用医薬品)
食品ごとのMRLを別紙様式で見直し、国際基準や使用実態を反映します。基準未設定の食品には一律基準(0.01ppm)が適用されます。

「アセチルシステイン」を対象外物質へ追加

一律基準の適用除外(対象外物質)に「アセチルシステイン」を追加します。これにより、当該物質は0.01ppmの一律基準の対象外となり、別途の枠組みでの管理となります。

法令・告示の位置づけと整合

食品衛生法第13条1項に基づく規格基準(厚生省告示第370号)および同3項に基づく対象外物質(厚生労働省告示第498号)を所要改正し、食品ごとのMRLと対象外物質リストの両面で整合を図ります。

実務への影響・企業の対応策

今回の見直しは、分析・証明・調達の三位一体での対応がポイントです。

  • 分析・検査体制
    検査計画の更新、メソッドの適合性確認、LOQ/LODの再点検を実施。特に基準強化が見込まれる品目は、リスクに応じてサンプリング頻度やロット別検査を強化します。
  • 仕様書・原材料調達
    原材料規格書・製品規格書のMRL欄を最新値に更新。農産原料は産地・時期・防除暦の情報取得を強化し、仕入先との誓約書や保証書の様式を改訂します。輸入は届出書式、SPS証明・残留証明の要件確認を前倒しで。
  • 表示・クレーム対応
    社内FAQと対外説明文面を整備し、変更点(基準値、施行時期、経過措置)を営業・CSに周知。万一の基準超過時は、原因追及(農薬使用・混入経路)から是正までのSOPを再訓練。
  • 取引・契約
    品質保証協定(QAA)や購買基本契約に“法令改正時の即時改訂条項”“MRL遵守の監査・報告義務”を明記。サプライヤー監査チェックリストへ対象6品目の項目を追加します。
  • 農業者・委託栽培先
    防除暦の記録・保管、使用農薬の遵守(剤型・希釈倍率・収穫前日数)を徹底。新基準施行後の初出荷ロットは検査を前置きし、残留リスクの平準化を図ります。

施行時期と今後のスケジュール

告示は2026年2月上旬(予定)、施行は告示日(基準強化に当たる品目は告示から1年後)です。企業は2025年度内に影響評価を完了し、2026年2月の施行日までに規格書・検査計画・契約書・社内手順の改訂を行いましょう。強化品目については、移行期間中の在庫・通関・販売スケジュールを逆算し、基準切替日の“挟み込み”を回避する出荷計画が有効です。

まとめ

本改正は、国際整合と食品安全の実効性確保を目的に、残留基準の精緻化と対象外物質リストの更新を行うものです。食品事業者は、検査法・規格書・契約の三点を同時にアップデートし、原料調達から最終製品まで一貫したコンプライアンス管理を再設計することが重要です。
出典:消費者庁「食品、添加物等の規格基準の一部を改正する告示(案)/対象外物質告示(案)概要(イソチアニル等・アセチルシステイン)」(令和7年10月30日)。

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