国土交通省と消費者庁は、「日本住宅性能表示基準」および「評価方法基準」の一部改正案を公表し、2025年9月公布・同年12月施行を予定しています。
今回の改正は、エネルギー政策・脱炭素戦略・木造建築技術・室内環境対策の最新動向を反映するもので、
特に**「一次エネルギー消費量等級7・8」の新設**と、CLT(土台なし)工法の劣化対策評価対応が注目点です。
改正の背景
- **GX2040ビジョン・第7次エネルギー基本計画(2025年2月閣議決定)**に基づき、省エネ基準を国際水準に引き上げる政策が打ち出されました。
- **2050年カーボンニュートラル実現と木材利用拡大(CLT活用)**により、木造住宅の新工法を評価基準に反映。
- **厚生労働省「シックハウス問題検討会」中間報告(2025年1月)**に基づき、室内空気中化学物質の測定法が見直されました。
これらを踏まえ、住宅性能表示制度を最新の技術・環境基準に適合させることが狙いです。
改正の主なポイント
1. 一次エネルギー消費量等級7・等級8の創設(省エネ性能強化)
【日本住宅性能表示基準】
- 現行の最上位「等級6」に加え、等級7・等級8を新設。
- 設計一次エネルギー消費量を住宅性能評価書に明示可能とする。
- 太陽光発電などの再エネ設備による削減率を併記できるよう改正。
【評価方法基準】
- 新等級の基準値・算出式を明確化。
| 区分 | 基準一次エネルギー消費量に対する割合 | 内容 |
|---|---|---|
| 等級7 | 誘導設計一次エネルギー消費量が基準の0.7以下 | 高断熱・高効率住宅レベル |
| 等級8 | 同0.65以下 | ZEH+相当、再エネ活用型超高性能住宅 |
これにより、ZEHを超える「超高断熱・創エネ住宅」の性能評価が制度上明確化されます。
2. CLTパネルを用いた「土台なし工法」住宅の劣化対策等級対応
【評価方法基準】
- CLT(直交集成板)を用いた木造住宅で、土台を設けない構造も評価対象に追加。
- 条件を満たせば従来の「土台基準」を適用せず、劣化対策等級の評価が可能に。
【認められる要件】
- 基礎と接するCLTパネル部分に水切りを設置していること。
- 防水措置が十分に施されていること。
- 室内から床下への漏気・水蒸気の遮断が有効であること。
これにより、CLTパネル構造の設計自由度が拡大し、地方の木造住宅市場における新工法採用が容易になります。
3. 室内空気中化学物質(VOC)の測定方法を改訂
【評価方法基準】
- 「6-3 室内空気中の化学物質の濃度等」において、トルエン等の濃度測定法から「容器採取-ガスクロマトグラフ/質量分析法」を削除。
- 理由:本手法は大気中VOC測定向けであり、室内空気採取には不適切と判断されたため。
- 厚労省「室内空気中化学物質の測定マニュアル(統合版)」に基づき、標準法を一本化。
これにより、住宅性能評価でのシックハウス関連評価の信頼性が向上します。
スケジュール(予定)
- 公布:2025年9月頃
- 施行:2025年12月頃
- 所管官庁:国土交通省・消費者庁
- 対象:住宅性能評価機関・設計事務所・建設事業者
実務への影響
(1)ハウスメーカー・工務店
- 新等級対応のため、省エネ設計・住宅設備選定の見直しが必要。
- 太陽光・蓄電池・高効率給湯器の導入効果を明示できるため、高付加価値住宅の販売戦略に活用可能。
(2)設計・評価機関
- 評価書類・計算式・申請フォーマットの改訂が必要。
- CLT住宅の新評価基準導入により、構造設計審査・検証項目が増加。
(3)消費者・住宅購入者
- 省エネ性能をより細分化して比較できるようになり、ZEH超クラスの住宅選択が容易に。
- VOC測定基準の厳格化により、安全・健康住宅への信頼性が高まる。
まとめ
2025年改正の住宅性能表示基準は、
- 「等級7・8」創設で高性能住宅を明確化
- CLT工法(木造新構造)の制度化
- VOC測定法の標準化で健康性能を強化
という3つの柱を中心に、脱炭素・安全・地域産業振興を支える新基準となります。
設計者・事業者は年内に改正内容を踏まえた評価体制・仕様設計の更新を進めることが求められます。
引用元
国土交通省・消費者庁「日本住宅性能表示基準の一部を改正する告示案および評価方法基準の一部を改正する告示案(概要)」令和7年5月