公正取引委員会は2025年10月1日、**「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第七条の書類等の作成及び保存に関する規則」(令和7年公正取引委員会規則第10号)**を公布しました。
この新法は、2026年1月1日に施行される「製造委託等代金支払遅延防止法」(旧・下請代金支払遅延等防止法)の改正を受けて制定されたもので、
すべての取引記録を電子的に保存・検索できる体制を法的に義務化する内容です。
制定の背景
近年、製造・IT・運送・建設など多分野で電子取引・電子記録債権の利用が拡大する一方、取引証跡の不備や改ざん、紛争時の資料欠落が課題となっていました。
公正取引委員会は、下請法体系を再構築し、**「製造委託等に係る中小受託事業者法」**として再編。
今回の規則で、契約・支払・検査・遅延利息支払など取引全過程の記録作成・保存を明文化しました。
従来の「紙保存中心」から、完全電子保存・検索対応の義務化へと転換します。
規則の内容
第1条 作成義務(記載・記録項目)
委託事業者(元請)は、取引に関して以下の項目を書類または電磁的記録として明確に記録しなければなりません。
- 中小受託事業者の商号・名称・識別番号
- 製造・役務の内容、委託日、納入期日、受領日
- 検査実施日・結果・不合格時の処理内容
- 受託者への変更指示・再実施命令の内容と理由
- 製造委託代金の額・支払期日および変更理由
- 金銭支払の場合:支払額・支払日・支払方法
- 金銭以外の支払手段使用時の詳細(種類・価額・引換条件など)
- 債権譲渡担保・ファクタリング・併存的債務引受を用いた支払の詳細
- 電子記録債権を利用した場合の発生額・支払期日・期間など
- 原材料を委託元から購入させた場合の品名・数量・決済方法
- 支払控除や残額の記録
- 遅延利息を支払った場合の金額・支払日
- 書面明示を省略した場合の理由と最終確定日
また、代金が確定していない場合は算定方法・金額決定理由まで明記が必要です。
第2条 記録の作成時期・方法
- 記載・記録は事実が生じた時点で速やかに行うこと。
- 書面の場合:中小受託事業者ごとに整理して記載。
- 電磁的記録の場合:以下の要件を満たす必要があります。
【電子保存の技術要件】
- 訂正・削除の履歴が確認できること
- 必要に応じて画面表示および書面出力が可能であること
- 検索機能を備えていること(次の条件を満たす)
- 事業者名(識別番号)で検索できること
- 製造委託日で範囲指定検索ができること
これにより、電子帳簿保存法に準じた検索性・真正性が求められます。
第3条 保存期間
すべての書類・電子記録は、記載または記録日から2年間保存する義務があります。
短期取引でも、納品・検査・支払記録は最低2年間保持しなければなりません。
実務への影響
(1)元請・発注企業
- すべての取引記録(契約書・請求・検査結果・支払記録)を電子的に作成・保存する体制が必須。
- ファクタリングや電子債権決済を採用している企業は、金融機関との契約情報まで保存対象に。
- 修正・削除ログの残らないシステム(PDF置換など)は違反リスクあり。
(2)中小受託事業者
- 下請側も、自社の記録を保存し、委託元からの変更・支払遅延を証明できるよう管理が必要。
- 紛争時に「支払期日・検査結果・利息支払履歴」を提示できることが重要。
(3)システム対応・監査対応
- 会計・受発注システムに訂正履歴・検索機能を追加する必要あり。
- 公取委や中小企業庁の立入調査で、電子記録の保存・表示・出力性を検証される可能性。
施行時期とスケジュール
- 公布日:2025年10月1日
- 施行日:2026年1月1日
- 対象取引:製造、修理、特定運送、役務提供などすべての下請取引
- 保存期間:取引記録作成日から2年間(電子または書面)
まとめ
2026年1月施行の「書類等の作成及び保存規則」は、下請取引の完全電子化・透明化を実現する新制度です。
記録の削除・改ざんを防ぐ仕組みを求める点で、電子帳簿保存法と同水準の厳格な要件が課されます。
元請・下請ともに、法令対応システム整備と内部統制ルールの見直しを年内に進めることが重要です。
引用元
公正取引委員会「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第七条の書類等の作成及び保存に関する規則」(令和7年公正取引委員会規則第10号、2026年1月1日施行)