厚生労働省は、2025年11月1日施行予定の**「消費生活協同組合法施行規則等の一部改正省令案」を公表し、パブリックコメントを実施しています。
今回の改正は、公正証書の電子化と年金事務手続の効率化**を目的としたもので、民事手続のデジタル化を進める国の方針に基づいています。
これにより、生協の貸付事業や年金の離婚分割・未支給給付請求など、これまで紙の証書や届出が必要だった手続が、電子データでも完結できるようになります。
改正の背景
2023年に成立した「民事関係手続等における情報通信技術の活用等の推進法」(令和5年法律第53号)により、公正証書が原則として電磁的記録で作成される制度へと転換されました。
これに伴い、他の関係法令でも「紙による公正証書」を前提とした条文の整備が必要になっています。
特に、
- 生協(消費生活協同組合)が行う貸付事業における「特定公正証書」
- 離婚時の年金分割請求で必要な「公正証書」
などが電子化対応の対象となります。
改正の主なポイント
1. 公正証書を「電磁的記録」として扱うことを明確化
生協法第13条に基づく貸付事業では、従来、債務契約に関して公証役場で作成する**特定公正証書(紙媒体)**を義務付けていました。
改正により、次のように整理されます。
- 公正証書は「電磁的記録(電子データ)」によって作成可能
- 電磁的記録をプリントアウトした書面も、公正証書として有効
- 貸付契約・債務履行の確認等をオンラインで行える体制を整備
これにより、全国の生協が行う貸付事業や連帯保証契約において、公証手続の電子化・迅速化が実現します。
2. 離婚時の年金分割請求で電子公正証書が利用可能に
厚生年金保険法第78条の2に基づく「離婚時の年金分割」では、配偶者間の合意内容を証明するため公正証書の添付が求められます。
今回の改正で、
- 電子的に作成された公正証書(電磁的記録)
- その出力書面(プリント形式)
を有効な添付書類として扱えるようになります。
これにより、全国の年金事務所での提出が円滑化し、電子申請システム(ねんきんネット等)との連携も想定されています。
3. 未支給年金・給付金の請求手続きを簡素化
厚生年金・国民年金・年金生活者支援給付金に関する未支給分の請求書について、記載事項の見直しが行われます。
主な変更点は以下のとおりです。
- 受給権発生に不要な情報(たとえば続柄や関係書類の詳細等)を削除
- 必要最小限の事項(氏名・生年月日・受給者との関係など)のみに整理
- 日本年金機構によるデータ処理を前提とした様式改訂
これにより、遺族や相続人が行う未支給年金の請求負担が軽減される見込みです。
4. 対象となる法令・規則の整備範囲
今回の省令改正は、以下の複数法令にまたがる一体的整備です。
- 消費生活協同組合法施行規則
- 厚生年金保険法施行規則
- 国民年金法施行規則
- 年金生活者支援給付金の支給に関する法律施行規則
これらを一括で改正することで、民事・社会保障手続の電子化を横断的に推進します。
施行時期とスケジュール
- 公布予定:2025年9月下旬
- 施行日:2025年11月1日
(一部の規定は10月1日から前倒し施行予定)
厚生労働省は、年金機構・公証役場システムの連携準備を進め、電子証書の運用を円滑に移行させる方針です。
実務への影響
- 生協(消費生活協同組合)
貸付業務で扱う契約公正証書の電子化が進み、事務効率化・コスト削減が期待できます。
一方で、電子データの保存・認証管理などセキュリティ体制の強化が求められます。 - 年金関係事務(企業・社労士・遺族等)
離婚分割・未支給年金の申請が簡素化され、電子証書対応の年金請求が可能になります。
将来的には、マイナポータルを通じたオンライン請求への移行も想定されています。
まとめ
2025年11月施行の本改正は、「紙の公正証書」から「電子公正証書」への転換を象徴する制度改正です。
年金・生協・福祉関連手続がデジタルで完結する時代に向け、行政・法人・個人それぞれが電子データ管理と本人確認の仕組みを整える必要があります。
特に、社会保険労務士・生協職員・自治体窓口担当者は、新様式・電子記録対応の実務運用を早期に把握しておくことが重要です。
引用元
厚生労働省「消費生活協同組合法施行規則等の一部を改正する省令案について(概要)」令和7年(2025年)9月公表【年金局事業管理課・社会・援護局福祉基盤課】