2025年4月1日から施行される「育児・介護休業法等の改正(令和6年法律第42号)」は、仕事と育児・介護の両立支援を強化する大規模な見直しです。
特に注目されるのは、これまで「子の看護休暇」だった制度が「子の看護等休暇」に改称され、学校行事や教育関連イベント参加も休暇対象となる点です。さらに、介護休業や所定外労働の制限、在宅勤務義務化など、企業が講じるべき措置が拡充されます。
経営者・人事労務担当者にとっては、就業規則の改訂や制度運用、従業員周知が必須となる改正です。
改正の背景
共働き世帯や介護を担う就業者の増加により、「仕事と家庭の両立」を支援する制度の拡充が急務となっていました。
育児休業・介護休業制度は1990年代以降段階的に整備されてきましたが、依然として利用率に男女差があり、介護離職も年間10万人規模に上ります。
政府は、少子化対策と人材確保を両立させるため、事業主に対し積極的な環境整備義務を課す法制度へと進化させています。
改正の主なポイント
1. 「子の看護休暇」から「子の看護等休暇」へ改称
従来の「子の看護休暇」は、病気・けがの看護に限定されていましたが、改正により以下のように対象が拡大します。
- 学校や保育園の休業に伴う子の世話
- 授業参観、運動会、卒園式など教育・保育行事への参加
対象は「小学校3年修了前の子」(9歳の年度末まで)。
これにより、病気以外の子育て支援目的でも休暇を取得可能となります。
また、労使協定により除外できる労働者の範囲が縮小され、雇用6か月未満の短期雇用者以外は原則として取得可能です。
2. 介護休暇の同様の見直し
介護休暇についても、労使協定による除外範囲が同様に整理され、雇用6か月未満の者を除き取得可能とされます。企業には、制度周知と取得促進のための教育が求められます。
3. 「残業免除」対象を小学校入学前までに拡大
所定外労働の制限(残業免除)について、対象が「3歳未満の子」から「小学校就学前の子」まで拡大します。
これにより、育児中の従業員はより柔軟な働き方を選択できるようになり、企業は勤務シフト・業務分担の見直しが不可避です。
4. 「介護申出」に対する面談義務の新設
従業員が家族の介護が必要になった旨を申し出た場合、企業は次の対応を義務づけられます。
- 介護休業制度や両立支援制度の内容を通知
- 本人の意向確認のための面談等の実施
- 不利益取扱いの禁止
さらに、40歳以上の労働者に対しては、介護制度の説明や情報提供を事前に実施する義務が新設されます。
5. 企業に義務づけられる「介護支援体制」
企業は、介護休業や両立支援制度の円滑な運用のため、次のいずれかの措置を講じなければなりません。
- 介護に関する研修の実施
- 相談体制の整備
- その他省令で定める環境整備措置
研修や相談窓口の整備は、企業規模を問わず求められます。
6. 育児休業取得状況の公表義務を「300人超企業」に拡大
これまで1,000人超企業に限られていた育児休業取得率の公表義務が、300人超企業にまで拡大します。
男女別・雇用区分別の取得率を年1回以上公表する必要があり、実態を見える化することで企業間比較が可能になります。
7. 在宅勤務制度を「努力義務」から「選択肢」へ
育児や介護を行う従業員に対して、在宅勤務・テレワークなど勤務形態の柔軟化を求める規定が追加。
特に3歳未満の子を育てる従業員や、要介護家族を抱える従業員には、在宅勤務等の措置を講じるよう努力義務が課されます。
8. 「小学校就学前まで」の柔軟措置の新設
3歳~就学前の子を育てる従業員に対し、以下の2つ以上の措置を講じる義務が新設されました。
- 始業・終業時刻の変更(時差出勤)
- 在宅勤務等の導入
- 育児短時間勤務制度
- 新たな特別休暇(行事参加・通院など)
これにより、企業は複数の支援策を組み合わせて設計する必要があります。
9. 次世代育成支援対策推進法の延長と行動計画の義務化
次世代育成支援対策推進法の有効期限が2035年3月31日まで10年延長。
100人超企業には、育児休業率・労働時間状況の把握と数値目標の設定義務が課されます。
100人以下企業も努力義務として、同様の分析と計画策定が求められます。
実務への影響・企業の対応策
- 就業規則・社内制度の改定
新たな休暇名称、適用範囲、在宅勤務等の措置を明記。 - 管理職・人事担当者への教育研修
面談義務・不利益取扱禁止の理解を徹底。 - データ公表と社内モニタリング体制の整備
育休取得率などの定期集計とウェブ公表。 - 在宅勤務・短時間勤務制度の拡充
子育て・介護両立の実効性を高める柔軟制度を導入。
施行時期と今後のスケジュール
この改正法は2025年4月1日施行。
介護支援関連の一部は公布日(2024年5月31日)から段階的に施行されます。
厚生労働省は2025年初頭までに省令・指針を公表予定で、企業は2024年度内に規程・制度改訂を完了させる必要があります。
まとめ
2025年4月施行の育児・介護休業法改正は、子育て・介護両立支援の実効性を高める制度転換です。
企業には、従業員個々の家庭状況に応じた柔軟な働き方を提供する体制づくりが求められます。
人事労務部門は単なる法令対応にとどまらず、人材定着・企業ブランディングの観点からも制度を再設計する好機といえるでしょう。