観光庁が2025年10月15日に公表した「インバウンド消費動向調査(2025年7〜9月期・1次速報)」によると、訪日外国人の旅行消費額は2兆1,310億円と推計され、前年同期比11.1%増となりました。新型コロナ禍後の回復が定着し、訪日客数・支出額ともに堅調に推移しています。国別では中国、台湾、米国が上位を占め、宿泊費と飲食費の伸びが全体を押し上げました。
調査の背景
本調査は、2024年から従来の「訪日外国人消費動向調査」を改称した「インバウンド消費動向調査」に基づき実施されたものです。調査項目や推計方法は従来と同じであり、2024年以前のデータとの比較が可能です。コロナ禍で中止されていた地域調査・クルーズ調査も再開され、より実態に即した推計が可能になりました。
国籍・地域別の動向
訪日外国人旅行消費額の総額は2兆1,310億円で、主な国籍・地域別構成比は次のとおりです。
- 中国:5,901億円(構成比27.7%、前年比+18.0%)
- 台湾:3,020億円(14.2%、+10.7%)
- 米国:2,215億円(10.4%、+19.8%)
- 韓国:2,070億円(9.7%、−10.4%)
- 香港:1,139億円(5.3%、−31.5%)
中国・台湾・米国の3か国で全体の半分以上を占めており、特に中国の回復が顕著です。一方、韓国や香港は前年より減少しており、地域間で明暗が分かれました。
費目別の特徴
支出構成では、宿泊費が36.6%と最も高く、次いで買物代(25.5%)、**飲食費(22.9%)**が続きます。前年と比較すると宿泊費・飲食費・娯楽サービス費の構成比が上昇し、物価上昇と滞在日数の増加が寄与したとみられます。宿泊・外食業界にとっては引き続きインバウンド需要が強い四半期となりました。
1人当たり旅行支出
訪日外国人(一般客)の1人当たり旅行支出は21万9,000円で、前年同期比0.2%減とほぼ横ばいでした。国別では次のような特徴があります。
- ドイツ:43万6,000円(+32.5%)
- 英国:36万円(+9.3%)
- スペイン:35万5,000円(−6.8%)
- 米国:31万9,000円(+6.3%)
欧州勢の支出額が高く、特にドイツは宿泊・交通・娯楽費のすべてで上昇。長期滞在型観光が消費を押し上げています。
滞在日数と旅行スタイル
平均滞在日数は全体で11.5泊(前年同期比+2.2泊)。欧州や東南アジアからの旅行者は20泊前後の長期滞在が多く、買物中心から体験・文化観光中心への移行が進んでいます。一方で、韓国・台湾からの旅行者は平均5泊前後と短期滞在型が主流です。
宿泊・外食・小売業への影響
本調査結果は、観光・外食・小売・宿泊業界の戦略に直結します。
- 宿泊業:単価上昇により宿泊費構成比が拡大。長期滞在者向けのキッチン付きホテルや地域滞在プランの開発が有効。
- 外食業:飲食費の比率上昇を背景に、多言語メニュー・キャッシュレス対応・深夜営業ニーズへの対応が求められる。
- 小売業:買物代構成比はやや低下。体験型消費・地方店舗での購買行動にシフトしているため、免税店の地方展開がカギ。
また、インバウンド消費の地域分散を見据え、地方空港・鉄道連携による観光導線の再設計が中長期的な課題です。
今後の見通し
四半期推移を見ると、2024年以降の消費額は2兆円前後で安定的に推移しており、2025年は年間8兆円超えが視野に入ります。物価高や円安傾向が続けば、訪日旅行の「割安感」が維持される見通しです。
一方、宿泊施設の人手不足・交通混雑・地域負担など、観光インフラの課題も浮き彫りになっており、持続可能な受入体制の整備が急務です。
まとめ
2025年7〜9月期のインバウンド消費は、過去最高水準に迫る2兆円超えを記録しました。消費の中心は宿泊・外食・体験型サービスへとシフトしており、単なる“買物観光”から“滞在型観光”へと転換が進んでいます。観光関連企業はこの潮流を踏まえ、長期滞在・地方分散・高付加価値サービスを軸にした戦略展開が求められます。
引用元:観光庁「インバウンド消費動向調査 2025年7〜9月期(1次速報)」(2025年10月15日公表)