令和7年度税制改正に伴い、「地方税法及び地方税法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律」(令和7年法律第7号)が2025年4月1日から施行されました。今回の改正は、個人住民税における控除見直しから、固定資産税や事業税の非課税・特例延長まで、幅広い地方税体系を対象としています。特に注目されるのは、所得控除の見直しと「特定親族特別控除」の創設、そして企業版ふるさと納税(地方創生寄附金税額控除)の3年延長です。
改正の背景
少子高齢化と物価上昇を背景に、家計・企業の税負担を調整しつつ、地域の投資と防災・インフラ整備を後押しすることが目的です。国税に合わせて基礎控除や所得控除の見直しが行われたほか、地方創生、老朽インフラの耐震化、再生可能エネルギー関連設備の整備を支える特例措置が延長されました。特に、企業の寄附を通じて地域事業を支援するスキームの継続や、固定資産税の減免措置が中小企業・自治体双方にとって実務上大きな影響を持ちます。
改正の主なポイント
個人住民税:基礎控除・特定親族特別控除の創設
2026年度課税(令和8年度分)から、扶養親族の所得要件が「48万円以下」から「58万円以下」に引き上げられます。これにより、就業調整を避ける配偶者・学生の税負担が軽減され、世帯単位での可処分所得が増える設計です。
さらに、新設された「特定親族特別控除」は、19歳以上23歳未満の子ども(控除対象扶養親族に該当しない者)を持つ世帯に対し、最大45万円の所得控除を認める制度です。若年層の教育・生活支援を目的としており、所得階層に応じて3万〜45万円まで段階的に控除額が設定されます。
法人住民税・事業税:マンション再生・ICT投資・寄附控除の見直し
マンション再生組合・売却組合・除却組合が新たに「収益事業課税」の対象となります。再生事業の法人格化が進む中、税務上の明確化により、事業収益の適正課税が図られます。
一方で、企業の寄附による地域支援を目的とする「企業版ふるさと納税」(特定寄附金税額控除)の適用期限が令和10年3月31日まで3年間延長。中小企業を中心に、地方公共団体への寄附を通じた地域振興プロジェクト支援が引き続き可能です。
また、医療情報基盤機構など公益性の高い事業に対しては、事業税非課税措置が新設されました。
固定資産税・都市計画税:防災・再エネ・地域更新を支援
鉄道・港湾・エネルギー・農業・防災分野において、多数の課税標準特例措置が延長されました。代表的なものとして、
- 鉄軌道の豪雨対策設備:課税標準を3分の2(一定事業者は4分の3)に軽減(5年間)
- 公害防止設備・再資源化施設:新たに対象に追加
- 南海トラフ地震対策施設、港湾脱炭素化事業施設、特定所有者不明土地の地域利用施設などの特例延長(~令和9年3月31日)
が挙げられます。
また、中小企業が「先端設備等導入計画」に基づき取得する機械設備の課税標準を最大4分の1に軽減する特例も延長され、賃上げ計画と連動した設備投資を促進します。マンションの大規模修繕減税についても、管理組合からの書類提出で適用できるよう緩和されました。
不動産取得税:特例措置の延長
投資法人や宅地建物取引業者が行う改修・再販住宅、サービス付き高齢者向け住宅などに係る不動産取得税の特例が、令和9年3月31日まで延長されます。これにより、再販市場の活性化と高齢者向け住宅整備の継続が可能となります。
自動車・軽自動車税:環境性能割の特例延長
ノンステップバス、ユニバーサルデザインタクシー、衝突被害軽減ブレーキ搭載車などに対する「環境性能割」軽減措置が令和9年3月31日まで延長されます。公共交通事業者やバリアフリー車両導入を進める事業者は、引き続き税負担軽減の恩恵を受けられます。
また、125cc以下の原動機付自転車の標準税率が年額2,000円に統一され、地域間の格差是正が図られました。
軽油引取税・防衛関連非課税措置
日米などの「円滑化協定」に基づき、同盟国軍が日本国内で公用に使用する軽油について非課税とする規定が整備されました。加えて、鉄道事業者が製造した軽油を自社車両に使用する場合の非課税措置も新設され、エネルギー効率化と事務簡素化を両立させています。
実務への影響・企業の対応策
税務担当者は、次の3点を重点的に確認する必要があります。
- 特定親族特別控除の導入準備:給与計算システムや住民税特別徴収の判定ロジックを更新。扶養区分と控除額テーブルの改訂を行う。
- 地方税申告・寄附控除の期限延長対応:企業版ふるさと納税や固定資産税特例の申請期間が延長されたため、プロジェクト単位で適用スケジュールを再確認。
- 再生組合等への課税整理:マンション再生・除却組合など新設法人の収益事業判定基準を明確化し、会計・税務処理フローを見直す。
また、固定資産税の特例を受ける際は、自治体による審査・認定書類の提出期限が厳格化されているため、設備投資計画の初期段階から税務部門が関与することが重要です。
施行時期と今後のスケジュール
主要改正は2025年4月1日施行。一部控除・延長措置は2026年度課税や2029年度まで段階的に適用されます。総務省・地方自治体は年度内に各種通達・様式改訂を公表予定であり、企業はそれに基づく内部システム改修と文書整備を進める必要があります。
まとめ
今回の地方税法改正は、物価上昇対策・所得支援・地域投資促進を目的とした包括的な見直しです。
特に「特定親族特別控除」の新設は世帯支援、「企業版ふるさと納税」の延長は地方創生の継続、「固定資産税特例の延長」は地域インフラ更新の推進につながる重要な柱です。企業・自治体双方が制度を的確に活用し、税負担の最適化と地域経済の再活性化を図ることが期待されます。
引用元情報(本文中リンクなし)
官報:令和7年3月31日 号外第8号
法令番号:令和7年法律第7号