2025年9月19日付で公布・施行された労働安全衛生規則の一部改正(令和7年厚生労働省令第90号)により、「ステアリン酸ナトリウム」と「りん酸トリフェニル」がラベル・SDS(安全データシート)対象物質から削除されました。同時に、関連する濃度基準告示および技術上の指針も改正され、「りん酸トリフェニル」に関する記載が削除されています。本改正は、化学物質管理制度の整理と整合性確保を目的とした措置であり、製造・輸入・販売事業者は速やかな対応が求められます。
改正の背景
労働安全衛生法では、危険性・有害性のある化学物質を譲渡・提供する際、ラベル表示およびSDS交付を義務づけています(法第57条、第57条の2)。対象となる物質は、施行令第18条および第18条の2に基づき、GHS分類(日本産業規格JIS Z7252)により区分され、労働安全衛生規則別表第2に列挙されています。
2024年度(令和6年度)以降、国による化学物質分類の更新に伴い、ラベル・SDS対象物質の追加・削除が段階的に実施されており、今回の改正はその一環として行われたものです。特に、令和7年3月31日までの新たな分類結果を踏まえた施行計画(令和9年4月1日施行予定)のうち、削除対象物質については準備期間を要しないため、前倒しで施行されました。
改正の主なポイント
1)ラベル・SDS対象物質から2物質を削除
労働安全衛生規則別表第2に掲げられていた「ステアリン酸ナトリウム」と「りん酸トリフェニル」が削除されました。当初は令和9年4月1日施行予定でしたが、改正省令により即日(令和7年9月19日)施行となりました。これにより、両物質についてはラベル表示およびSDS交付義務がなくなります。
2)「りん酸トリフェニル」の濃度基準値も削除
2024年の告示(令和6年厚生労働省告示第196号)で、アクリル酸など112物質の濃度基準値が新設されていました。その中に含まれていた「りん酸トリフェニル」についても、今回の改正告示(令和7年厚生労働省告示第247号)により削除されました。結果として、同物質に対する濃度管理(作業環境測定やばく露評価)も対象外となります。
3)技術上の指針からも「りん酸トリフェニル」を削除
あわせて、濃度基準の適用や測定方法を定める技術上の指針(公示第27号)が改正され、「りん酸トリフェニル」に関する測定法・評価基準の記載が削除されました。これにより、現場における測定対象物質リストや分析計画も改訂が必要です。
実務への影響・企業の対応策
今回の改正は、対象物質削除という「義務解除型」の改正ですが、企業には次の対応が求められます。
まず、SDSおよびラベル管理台帳を更新し、「ステアリン酸ナトリウム」と「りん酸トリフェニル」を対象物質一覧から削除します。これらの物質を扱う製品については、SDSの改訂版を作成し、旧バージョンの廃棄・差し替えを行う必要があります。
また、濃度基準および測定対象物質リストにも変更が生じるため、作業環境測定計画やばく露管理リストを見直し、改正後の告示(厚生労働省告示第247号)および改正指針の最新版に沿った形に更新します。
なお、りん酸トリフェニルは一部の可塑剤・難燃剤・潤滑油添加剤などに含まれており、今後も製造・輸入・販売を継続する場合は、引き続き自主的な化学物質管理(GHS表示、社内SDS、廃棄物管理など)を行うことが望まれます。
施行時期と今後のスケジュール
今回の改正省令・告示・指針は、いずれも2025年9月19日(公布日)から即日施行・適用されています。令和9年4月施行予定の「ラベル・SDS対象物質の追加・削除」本体改正(令和7年厚生労働省令第12号)より前倒しで適用された点に注意が必要です。
企業は、遅くとも2025年10月末までにSDS・ラベル表示、化学物質管理台帳、環境測定計画を改訂し、改正後の物質リストを反映させることが推奨されます。
まとめ
2025年9月改正は、化学物質の分類更新に伴う「整合性確保」を目的としたものであり、りん酸トリフェニルおよびステアリン酸ナトリウムがラベル・SDS義務および濃度基準の対象から除外されました。対象削除とはいえ、社内SDSや作業環境測定計画、顧客提供資料などへの影響は大きいため、文書改訂とデータ更新を速やかに行うことが重要です。
(引用元:厚生労働省 労働基準局長通達「労働安全衛生規則の一部を改正する省令等の施行について」(基発0919第1号、令和7年9月19日))