厚生労働省は、消費生活協同組合法施行規則等の一部を改正する省令案を公表しました。公正証書の電磁的記録化に対応するため、生協の貸付事業で用いる特定公正証書や、離婚時の標準報酬改定請求に添付する公正証書の取扱いを見直します。あわせて、日本年金機構に提出する「未支給の保険給付等」の請求書の記載事項を削減します。影響を受けるのは、生協で貸付事業を行う組合、企業の人事・労務部門(厚年・国年の実務補助を行う担当者)、社会福祉・年金関連の窓口業務です。
改正の背景
民事手続のデジタル化を進める法改正により、公正証書は原則として電磁的記録で作成できるようになります。これを踏まえ、生協法第13条に基づく貸付事業の「特定公正証書」や、厚生年金保険法第78条の2に関わる離婚時の標準報酬改定請求に添付する「公正証書」について、電磁的記録またはその出力形式を明確に位置づける必要が生じました。同時に、日本年金機構の事務効率化の観点から、未支給の保険給付等の請求書における不要情報の削除が検討されています。
改正の主なポイント
公正証書の電磁的記録を明確化
消費生活協同組合法施行規則における「特定公正証書」および厚生年金保険法施行規則における「公正証書」について、電磁的記録で作成されたもの(またはその出力形式)を含むことを規定上明確化します。これにより、電子公証に基づく手続が制度的に担保され、紙面前提の手戻りが減ります。
年金の未支給請求書の記載事項を削減
厚年法施行規則、国民年金法施行規則、年金生活者支援給付金法施行規則で定める、受給権者死亡時の未支給の保険給付等の請求書について、受給権の発生に不要な情報を除外。日本年金機構の処理効率を高めつつ、申請者側の記載負担を軽減します。
根拠条項の整理
生協法第13条、厚年法第78条の2・第98条・第101条、国民年金法第110条、年金生活者支援給付金法および同施行令の規定に基づく所要の改正です。
実務への影響・企業の対応策
今回の改正は、紙から電子へという形式の明確化と、申請書式の合理化が軸です。企業・組合・実務担当者は次の観点で準備を進めるのが実務的です。
- 生協(貸付事業)の文書運用更新
特定公正証書の作成・保管・証拠化プロセスを、電磁的記録前提のワークフローへ移行します。電子署名・タイムスタンプの要件、原本性の担保、外部公証人とのデータ授受(形式・容量・閲覧権限)を手順書に落とし込み、紙原本との併存ルール(保管期限・閲覧ポリシー)を明文化してください。 - 人事・労務の年金手続き支援マニュアル改定
離婚時の標準報酬改定請求で添付する公正証書が「電磁的記録の出力形式」を含むことが明確化されるため、従業員からの提出書類ガイドを更新します。電子データ提出が不可の場合の紙出力要件、写しの真正性確認(原本照合の手順)を整備しましょう。 - 未支給請求の案内様式・チェックリスト見直し
遺族対応で企業がガイダンスを行う場合、請求書の記載事項削減に合わせて、社内FAQ・チェックリストを刷新します。不要項目の削除で記載ミスが減る一方、必須項目の漏れがないよう最新様式に沿った確認フローを作成してください。 - 情報セキュリティと保存要件の再点検
電磁的記録の保管は、アクセス権管理、改ざん防止、バックアップ、保存期間満了時の適切な廃棄まで含めた統制が不可欠です。監査対応を見据え、ログ管理や第三者証明の取得・保管方法を整備しましょう。
施行時期と今後のスケジュール
公布は2025年9月下旬予定、施行は原則2025年11月1日です。一部規定は2025年10月1日および公布日に施行されます。関係する様式・運用通知が順次示される想定のため、公布後ただちに最終文言と適用日を確認し、社内規程・様式・案内資料を更新してください。
まとめ
本改正は、公正証書の電磁的記録化の流れを受け、生協の貸付や厚年実務で「電子前提」の事務に整合させるものです。同時に、未支給請求の記載事項見直しで、年金事務の手続きは簡素化されます。企業・組合は、電子文書の真正性・保存統制、従業員案内の更新、様式改定への追随をセットで進めることで、施行初日からの不備・差戻しを回避できます。