令和8年4月に施行予定の「介護保険法施行令の一部改正」により、介護保険料の所得段階を決定する仕組みに一時的な特例が設けられます。
これは、令和7年度税制改正で実施される「給与所得控除の最低保障額引き上げ(55万円→65万円)」によって、介護保険料が想定外に減少することを防ぐ措置です。
改正の影響を最も受けるのは、第1号被保険者(65歳以上の方)を多数抱える自治体・介護保険事業者であり、保険料収入の安定確保に直結する重要な改正です。
改正の背景
令和7年度税制改正では、物価高や就業調整への対応として、給与所得控除の最低保障額を10万円引き上げる見直しが行われます。
しかし、この見直しにより、一部の高齢者の「合計所得金額」が減少し、介護保険の保険料区分(所得段階)が低下するケースが発生します。
結果として、保険者である市町村の介護保険料収入が減少し、第9期介護保険事業計画(令和6~8年度)の運営に支障を来すおそれがあります。
こうした「制度外要因による収入減」を防ぐため、厚生労働省は介護保険法施行令に特例規定を設け、税制改正の影響を一時的に遮断する仕組みを整備することとしました。
改正の主なポイント
1. 給与所得控除見直しの影響を「無効化」
令和7年度の給与所得控除見直しによって、介護保険料の所得段階が変わりうる第1号被保険者については、
「見直し前の計算方法」で判定される特例を設けます。
これにより、実際の収入や生活状況が変わらなくても保険料が下がるような不均衡を防ぎます。
2. 市町村民税の非課税基準にも特例を設定
介護保険料は、市町村民税の課税・非課税状況をもとに段階区分を行っています。
改正では、課税・非課税の境界が給与所得控除の見直しによって変化しないよう、
「従来の所得水準に基づく非課税判定」を継続できる特例を設けます。
3. 介護保険法第129条第2項に基づく改正
この改正は、介護保険法(平成9年法律第123号)第129条第2項に基づき、
「保険料の算定方法その他必要な事項を定める政令」として行われるものです。
実務への影響と自治体・事業者の対応
自治体(保険者)の対応
今回の改正により、市町村は令和8年度の介護保険料を算定する際、
「特例による所得判定方式」を適用する必要があります。
これにより、所得控除の変更があっても、被保険者の段階区分が従前と変わらないよう調整が行われます。
システム改修や課税情報の参照方法に影響が及ぶため、各自治体は早期に事務処理マニュアルの更新とシステム調整を行うことが求められます。
介護事業者への間接的影響
介護保険料の段階変更が抑制されることで、被保険者負担の急減を防ぎ、
保険財政の安定性が確保されます。結果として、介護報酬財源の確実な確保につながり、
介護事業所の運営にも安定効果が期待されます。
施行時期とスケジュール
- 公布日:令和7年12月(予定)
- 施行日:令和8年4月1日
改正内容は、第9期介護保険事業計画(令和6~8年度)の期間中に適用され、
次期(第10期)計画における見直しの際に、税制・所得構造の変化を踏まえ再検討が行われる見通しです。
まとめ
今回の介護保険法施行令改正は、税制改正による影響を一時的に遮断する「安定化措置」として位置づけられています。
保険料の公平性と財源の安定を両立するための技術的な修正であり、自治体の事務処理や介護財政に直接関わる実務的改正です。
2026年度の介護保険料算定に向け、自治体や保険事業者は早期に対応方針を整理する必要があります。