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【2025年10月公表予定】マンション標準管理規約が改正へ。所在不明区分所有者の扱い、修繕積立金の使途、国内管理人制度など実務が大きく更新

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国土交通省は、老朽化マンションの適正管理と再生を促進するため、「マンション標準管理規約(単棟型・団地型・複合用途型)」の改正案を2025年10月に公表する予定です。背景には、2025年施行の建物の区分所有等に関する法律等の一部改正(令和7年法律第47号、以下「改正法」)があります。今回の見直しは、総会決議の多数決要件、所在等不明の区分所有者の扱い、国内管理人制度の導入、修繕積立金の使途規律、共用部分に関する損害賠償請求権の代理行使など、管理組合運営の根幹に関わる論点を網羅します。管理会社、デベロッパー、リーシング・仲介、修繕・改修事業者、金融機関・保証会社、さらにはオーナー企業の総務・不動産担当者まで、幅広いプレイヤーの実務に直接影響します。

改正の背景

マンションの高経年化と所有者の高齢化、相続未了や海外転出による所在不明問題の顕在化により、総会で重要決議が進まない、修繕積立金が十分に機能しないといった課題が深刻化してきました。改正法はこうした硬直を打開し、再生円滑化や管理適正化を図るための制度的手当てを行いました。本改正案は、その新制度を管理規約に落とし込むとともに、本人確認や役員就任資格等、近時の社会情勢や不正防止の観点を踏まえた運用基準を整備するものです。

改正の主なポイント

総会決議の多数決要件の見直し(第47条・同コメント)

改正法に合わせ、標準管理規約上の多数決要件が整理されます。再生・建替えなど高度な意思決定から、管理規約の通常改正や工事決議まで、要件の明確化により手続の予見可能性が高まります。所在等不明者の取扱いとの組合せで、実際に意思表示できる母集団を前提に可決可能性が上がる構造になります。

総会招集通知の記載事項を整備(第43条)

議題の特定や関連資料の提示方法、電磁的方法の活用可能性など、招集段階での情報提供の充実が図られます。議決の瑕疵を巡る紛争予防と、区分所有者の理解促進が狙いです。

国内管理人制度の手続規定を新設(第31条の3・同コメント)

海外在住等の所有者に代わり、国内で連絡・手続を担う「国内管理人」を活用できるよう、選任・届出・権限範囲を標準管理規約に位置付けます。連絡不能に起因する滞納や工事同意の停滞を軽減します。

所在等不明区分所有者を総会決議等の算定から除外(第67条の3・同コメント)

相当の調査を尽くしても連絡不能な所有者について、出席数や議決権数から除外する手続を規定します。定足数割れや可決要件未達の慢性化を回避し、管理・修繕の意思決定を前進させます。

マンション特化の財産管理制度の活用手続を整備(第67条の4・第67条の5・同コメント)

「所有者不明専有部分管理制度」等、マンション版の財産管理制度を規約に反映。専有部分が放置され共用部の安全・衛生に支障が生じる場合等に、管理組合が適切に手続を進められるよう道筋を明確化します。

修繕積立金の使途を明確化(第28条・同コメント)

長期修繕計画に基づく工事費だけでなく、調査診断・設計監理・合意形成支援、再生準備費用等、実務で必要となる支出を規約上明確化。資金の目的外使用の防止と、合意形成の透明性向上が図られます。

共用部分に係る損害賠償請求権の代理行使(第24条の2・同コメント)

漏水・外壁落下など共用部分に起因する損害について、管理組合が代理人として一括して請求・回収できる仕組みを位置付け、権利行使の実効性を高めます。保険・補償スキームとの連携も想定されます。

社会情勢を踏まえた留意事項の追加(第35条・第55条関係コメント)

役員就任資格の考え方や、役員・管理会社担当者等の本人確認手続を明確化。不正送金や権限なりすましの予防、口座開設・金融取引におけるコンプライアンス対応を後押しします。

実務への影響・企業の対応策

管理組合・管理会社は、標準管理規約の改正を踏まえ、自組合の管理規約・細則の改定プロジェクトを立ち上げる必要があります。まずは現行規約と改正案の差分を洗い出し、所在等不明者の定義・調査プロセス・除外手続、国内管理人の選任・届出フォーム、総会招集通知の記載テンプレート、オンライン説明会や電磁的方法の運用ルールを整備します。合わせて、修繕積立金の使途と承認フロー、共用部分損害の代理請求権限と弁護士・保険会社・鑑定人との連携手順を文書化します。

不動産デベロッパーは、分譲時の標準管理規約ひな形と重要事項説明書のアップデートが不可欠です。所在等不明リスクや国内管理人制度、積立金の使途・水準について、販売段階からの適切な情報提供が将来の紛争予防につながります。PM・BMを受託する管理会社は、議案書式、出欠・委任状・議決権行使書のフォーマット、KYCチェックリスト、滞納・所在不明調査の標準手順(住基・登記・郵送記録・現地確認・弁護士照会等)をワークフローに落とし込み、システム(理事会ポータル、電子投票、文書管理)を改修します。

修繕・建設事業者は、長期修繕計画策定や合意形成支援のフェーズから契約メニューを再設計し、積立金の適正使用と工事発注の分離・監理の透明性を高める提案が求められます。金融機関・保証会社は、管理組合口座や借入審査における本人確認・権限確認の運用基準を見直し、代理行使や所在不明者除外を前提とした可決判定書類のチェックポイントを明確にします。リーシング・仲介事業者や企業の総務・不動産担当は、国内管理人の届出状況や規約上の使用細則を確認し、賃貸借契約条項や入居時説明の更新を進めます。

施行時期と今後のスケジュール

公表は2025年10月の予定です。公表後、国交省から解説資料やQ&Aが示されると見込まれ、各管理組合は次回定期総会または臨時総会での規約改定議案上程を目指すのが実務的です。所在等不明者の調査・公告等には時間を要するため、2025年内に調査着手、2026年上期の総会での可決、2026年度中の運用開始というタイムラインを一つの目安とすると準備が円滑です。

まとめ

今回の標準管理規約改正案は、合意形成を阻むボトルネックを制度面から解消し、再生・修繕・資金管理の実効性を高める内容です。所在等不明者の除外や国内管理人制度は意思決定を前に進め、修繕積立金の使途明確化と損害賠償の代理行使は資金と権利の流れを整理します。管理組合・管理会社・関連事業者は、規約改定と運用プロセスの整備、KYCや電磁的方法の導入、関係書式・システムの更新を早期に着手し、2026年度の本格運用を見据えた体制を構築してください。

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