厚生労働省は、2026年(令和8年)4月1日に施行予定の「国民年金法施行規則等の一部を改正する省令案」を公表しました。今回の改正は、令和7年度税制改正で新たに創設される「特定親族特別控除」に対応するもので、20歳前傷病による障害基礎年金(いわゆる20歳前障害基礎年金)の支給停止判定などに用いる所得基準の計算方法が変更されます。
この改正は、障害年金の受給者や年金事務所の実務担当者、自治体の福祉部門などに直接影響する内容です。
改正の背景
背景には、令和7年度税制改正による所得税・住民税制度の見直しがあります。新たに「特定親族特別控除」が地方税法等に創設されることで、控除制度の整合性を保つ必要が生じました。
障害基礎年金は、所得が一定額を超えると支給が停止される仕組みとなっており、その「所得基準額」は税法上の控除額をもとに算出されます。したがって、税制上の新控除が設けられると、年金制度側でも同様の控除を考慮するよう改正が求められるわけです。
改正の主なポイント
特定親族特別控除の追加
改正の核心は、20歳前障害基礎年金の支給停止判定に用いる所得計算の際、新たに「特定親族特別控除」を控除対象に加えることです。
これにより、該当する親族を扶養している場合などには、所得計算上の控除額が増えるため、支給停止基準を下回るケースが増える可能性があります。
年金関係様式の見直し
所得状況届など、障害基礎年金関連の各種届出書・申請書様式にも、特定親族特別控除の記載欄を新設することが盛り込まれています。これにより、年金受給者が控除の適用を申告しやすくなります。
対象となる制度
今回の省令改正は、以下の複数制度にまたがって行われます。
- 国民年金法施行規則(昭和35年厚生省令第12号)
- 特別障害給付金の支給に関する法律関係規定(平成16年法律第166号)
- 年金生活者支援給付金の支給に関する法律施行令(平成30年政令第364号)
実務への影響・企業の対応策
この改正は主に障害年金受給者やその家族に直接影響しますが、企業や自治体の人事・労務担当者にも次のような実務対応が求められます。
まず、年金受給者を雇用している企業では、年金支給停止に関わる所得基準が変更されるため、年収調整や雇用調整の判断に影響を及ぼす可能性があります。 これまで支給停止となっていた受給者が、新控除の追加により年金を引き続き受給できるケースも考えられます。
また、社会保険労務士や年金事務所担当者にとっては、新しい様式への対応や控除内容の説明義務が発生します。
自治体の福祉部門や障害者支援窓口でも、控除適用に関する案内体制を整えることが求められるでしょう。
施行時期と今後のスケジュール
- 公布予定日:令和7年12月中旬(2025年12月頃)
- 施行日:令和8年4月1日(2026年4月1日)
公布後、厚生労働省は関係機関への通知や様式改正の詳細を示す予定です。事業者・自治体は、2026年4月の施行までに申請様式の差し替えやシステム対応を進める必要があります。
まとめ
今回の改正は、税制改正と連動して障害年金制度の整合性を保つためのものです。特定親族特別控除が所得基準計算に加わることで、障害基礎年金の支給対象者が広がる可能性があり、受給者にとっては支援の拡充といえます。
一方で、企業・自治体側では、改正内容に基づいた年金関係書類の更新や受給者対応の準備が不可欠です。
今後、厚生労働省から発出される正式な省令および通知文を確認し、早めに実務対応を検討することが重要です。