こども家庭庁は、「児童福祉法等の一部を改正する法律」(令和7年法律第29号)の施行に向け、関連する内閣府令の改正案を公表した。今回の改正では、保育現場での虐待防止体制の強化と、地域限定保育士制度の全国展開(一般制度化)が柱となる。施行は令和7年10月1日を予定しており、保育・教育関連事業者は早急な対応が求められる。
保育士による虐待防止を法令で明確化
改正法では、保育所などの職員による児童虐待を防止するため、通報義務を法的に位置付けた。
これにより、保育士や職員が虐待行為を発見・疑われる場合には、速やかに通報・報告する責務を負う。
こども家庭庁は、これを受けて各種省令・内閣府令において「虐待行為をしてはならないこと」を明文化した。
特に「特定教育・保育施設及び特定地域型保育事業並びに特定子ども・子育て支援施設等の運営に関する基準」(平成26年内閣府令第39号)には、以下の規定が新設される。
特定教育・保育施設の職員は、児童福祉法第33条の10第1項各号に掲げる行為、その他子どもの心身に有害な影響を与える行為をしてはならない。
幼保連携型認定こども園・幼稚園も同様に対象となり、教育・保育現場における倫理的・法的責任の明確化が進む。
地域限定保育士制度を全国化へ
もう一つの柱が、「地域限定保育士制度」の一般制度化だ。
これまで国家戦略特区に限って認められていた「地域限定保育士」は、一定の地域でのみ従事できる保育士資格として運用されていたが、改正法により全国制度へと移行する。
これを受け、以下の関係基準において「保育士」に地域限定保育士を含めるよう改正される:
- 児童福祉施設の設備及び運営に関する基準
- 指定通所支援事業等の人員・設備・運営基準
- 指定障害児入所施設等の基準
- 家庭的保育事業等の設備及び運営基準
- 放課後児童健全育成事業の運営基準
- 一時保護施設の設備及び運営基準
- 乳児等通園支援事業の基準
これにより、全国どの地域でも地域限定保育士が保育士として配置要件を満たすことが可能となる。
慢性的な保育士不足に悩む自治体や事業者にとって、人材確保の新たな選択肢となる見込みだ。
現場対応が必要な分野
改正は「虐待防止」と「人材制度改革」を同時に進めるものであり、保育所・認定こども園・放課後児童クラブ・障害児支援事業など幅広い施設種別に影響する。
実務面では以下の対応が求められる可能性がある。
- 職員研修・内部通報体制の整備
- ハラスメント・虐待防止のガイドライン改訂
- 地域限定保育士採用に向けた人事・労務管理の見直し
- 保育士配置要件・資格証明確認手続の更新
- 自治体・こども家庭庁への報告書様式変更への対応
特に中小規模の保育事業者では、行政文書や内規改訂への対応コストが発生する可能性がある。
施行スケジュール
こども家庭庁によると、関連内閣府令の公布は令和7年9月上旬を予定。
施行日は同年10月1日とされており、制度整備期間は実質的に半年未満となる。
各地方自治体はこれに合わせて条例や運用指針を見直すことになり、秋以降は各自治体で説明会・周知が進む見込みだ。
関係者コメント
こども家庭庁成育局保育政策課は、「虐待防止と人材確保の両立を目指す制度整備であり、現場の意見を踏まえながら柔軟に運用を進めたい」としている。
また保育事業者団体からは、「地域限定保育士の一般化は歓迎だが、待遇や配置要件の詳細を明確にしてほしい」との声も上がっている。
まとめ
今回の改正は、保育現場の安全性確保と人材不足対策を同時に進める内容であり、保育業界の構造変化を促す法改正といえる。
令和7年秋の施行に向け、事業者・自治体・教育機関は対応準備を加速させる必要がある。