食品の消費期限や賞味期限は、消費者の安全を確保しながら食品ロスを削減するために重要な情報です。消費者庁は、最新の科学的知見と海外の制度を踏まえ、食品関連事業者が適切に期限表示を設定できるよう、「食品期限表示の設定のためのガイドライン」を改正する予定です。本ガイドラインの改正により、事業者はより合理的で適正な期限設定が求められるようになります。
改正の主な内容
- 消費期限と賞味期限の明確化
消費期限は「安全性を確保するための期限」であり、賞味期限は「美味しく食べられる期限」であることが改めて整理されました。特に、賞味期限を過ぎても食品がすぐに食べられなくなるわけではないことが明記され、食品ロス削減の観点から消費者への情報提供が求められます。 - 科学的・合理的な期限設定の推奨
事業者は食品の特性に応じた科学的試験(微生物試験、理化学試験、官能検査等)を実施し、合理的な期限を設定する必要があります。従来の一律的な設定ではなく、食品ごとの特性に応じた客観的な指標を考慮するよう求められます。 - 安全係数の見直し
過度に安全係数を短く設定することで食品ロスが発生することを防ぐため、安全係数は「1に近づける」ことが推奨されます。一方で、保存環境や食品の性質によって必要な場合には、安全係数の設定が認められます。 - 期限表示の柔軟化と情報提供の強化
- 賞味期限が3か月を超える場合、「年月」での表示が認められる。
- 消費者が期限の意味を誤解しないように、「期限表示が未開封の状態を前提としている」ことを明示することが望ましい。
- 賞味期限を過ぎた食品の品質判断について、色や臭いなどの情報を提供することが推奨される。
- 1/3ルールの法的義務なしの明確化
納入期限・販売期限として流通業界で広く採用されている「1/3ルール」(賞味期限の最初の1/3の期間を納入期限、次の1/3を販売期限とする慣習)は、法的義務ではないことが改めて明示されました。事業者はこのルールに縛られる必要はなく、より合理的な期限設定が可能となります。
実務への影響
- 食品関連事業者は、期限設定の見直しが必要
科学的な根拠をもとにした期限設定が求められるため、各事業者は微生物試験や品質検査を実施し、合理的な期限を設定する必要があります。特に、過度な安全係数の設定を見直し、適正な期限を設定することが重要です。 - 食品ロス削減に向けた情報提供の充実
消費者が賞味期限を誤解して食品を廃棄しないように、「期限を過ぎても直ちに食べられなくなるわけではない」という情報を積極的に提供することが求められます。これにより、食品ロス削減に寄与することが期待されます。 - 輸入食品の期限表示の適正化
海外の期限表示とは異なるケースがあるため、輸入業者は適正な表示を行い、消費者に分かりやすい形で情報提供を行う必要があります。
施行スケジュール
改正ガイドラインの公布は令和7年中を予定しており、施行は同年内に実施される見込みです。事業者は、早期に改正内容を把握し、運用を見直すことが推奨されます。
まとめ
食品期限表示の見直しは、消費者の安全を確保しながら食品ロスを削減するための重要な改正です。特に、期限設定の科学的合理性や、賞味期限を過ぎても食べられる可能性があることを適切に伝えることが求められます。事業者は、改正ガイドラインを踏まえて期限設定を見直し、消費者に対する適切な情報提供を行うことで、食品ロスの削減と安全な食品供給の両立を目指すことが期待されます。