2025年10月1日施行予定の「家賃債務保証業者登録規程の一部改正」(国土交通省告示・令和7年7月公布予定)は、家賃債務保証会社による不適切な取立てや説明不足などの苦情・相談が増加している現状を受け、業務運営の一層の適正化を目的に行われるものです。
対象となるのは、国土交通大臣の登録を受けて家賃債務保証業を行う全事業者であり、賃貸住宅管理業者、不動産仲介業者、家主・オーナーにも間接的な影響が及びます。
改正の背景
家賃債務保証業者登録制度(平成29年施行)は、入居者の家賃滞納に備える保証ビジネスを適正に運営し、賃貸市場の健全化を図ることを目的として整備されました。しかし近年、求償権の行使(滞納家賃の立替後の回収)に関して「過剰な督促」「恐怖を与える言動」「深夜の訪問や電話」といった行為が問題化。
また、苦情・相談に迅速に対応できない体制や、契約書面に窓口情報が記載されていないケースも指摘されており、利用者保護の観点から制度の見直しが求められていました。今回の改正は、こうした課題を是正し、業者の説明義務・報告義務・行為規制を具体化するものです。
改正の主なポイント
① 不当取立て行為の明確な禁止(登録申請書添付書類の見直し)
登録申請時に提出する内部規則等において、次の禁止規定を明記し、その写しを提出することが求められます。
- 賃借人に対して恐怖や不安を与える言動をしてはならない。
- 社会通念上不適当な程度に、反復して訪問・電話などを行うことを禁止する(正当な理由がある場合を除く)。
これにより、求償権の行使における倫理規定が形式的な書面審査で確認されるようになります。
② 業務処理の原則の追加(第11条・第23条)
家賃債務保証業者は、賃借人その他の者の私生活や業務の平穏を害するような言動、または権利利益を侵害することのないように、適正に業務を行う義務が明記されました。
さらに、求償権を第三者に譲渡する際には、回収行為が権利侵害に及ぶおそれが明らかな相手に対しては譲渡を行ってはならないと規定されました。これにより、いわゆる「債権回収代行業者」への不適切な委託も抑制されます。
③ 契約締結前後の説明義務強化(第17条・第18条)
保証委託契約の締結前および締結時に交付する書面または電磁的記録に、以下の事項を新たに記載することが義務化されます。
- 保証契約に関する相談・苦情対応窓口の氏名または部署名・連絡先
これにより、契約段階での利用者の安心感とトラブル発生時の迅速な対応が期待されます。
④ 求償権行使時の情報提供義務(第19条)
賃借人等に支払を催告する際、または求償権行使時の請求に応じて、以下の情報を記載した書面または電磁的記録を提供することが義務づけられます。
- 家賃債務保証業者の名称・住所・電話番号
- 担当者または部署名
- 保証委託契約の年月日
- 求償権の金額および内訳
- 苦情・相談対応窓口の名称・連絡先
また、求償権の回収を第三者が行う場合も、同様の情報を相手方に明示する義務が追加されています。
⑤ 国土交通大臣への報告項目の追加(別記様式第9号)
毎年度提出する「業務等状況報告書」に、以下の新項目が追加されます。
- 苦情・相談発生時の対応体制(担当部門名・電話番号・責任者の役職名)
苦情対応体制の有無・機能性が行政監督上のチェックポイントとなるため、組織体制の整備が求められます。
実務への影響・企業の対応策
今回の改正で、家賃債務保証会社には「取立て行為の適正化」と「苦情対応の透明化」が強く求められます。
具体的には、次のような社内整備が必要です。
- 内部規程の改訂:取立て行為禁止条項を明文化し、社員研修で周知徹底する。
- 苦情窓口の明示:契約書・通知書・請求書に苦情受付の部署名・電話番号を明記。
- 報告体制の整備:定期報告書に対応体制を明記するため、組織上の責任者・管理者を明確化。
- 外部委託の見直し:求償権の譲渡・回収委託先について、倫理基準遵守の有無を事前審査。
- 電磁的記録対応:紙面交付だけでなく、メール・電子契約サービスでの記録提供体制を整備。
これらの対応は、国土交通省の監督や登録更新時の審査項目にも直結するため、早期の体制構築が重要です。賃貸管理会社・不動産オーナーは、提携する保証会社の遵法体制を確認しておく必要があります。
施行時期と今後のスケジュール
告示は令和7年7月頃に予定され、施行日は令和7年10月1日です。
改正事項の運用に際しては、一定の経過措置が設けられる予定ですが、実務上は2025年秋までに内部規程・契約書式・報告様式の見直しを完了することが推奨されます。
また、監督当局による新様式の公表や説明会が順次実施される見込みのため、国交省住宅局の発表を随時確認することが重要です。
まとめ
今回の改正は、家賃債務保証業界における「取立て・苦情対応の適正化」を徹底する転換点です。
単なる形式的改訂ではなく、現場での行動規範や顧客対応姿勢が問われる内容となっています。経営者・管理部門は、改正内容を社内規程と契約運用に落とし込み、トラブル未然防止と信頼性向上につなげることが求められます。
賃貸住宅市場全体の信頼回復に向け、法令遵守と顧客対応品質の両立が今後の競争力を左右するでしょう。