2025年4月16日に公布された「道路法等の一部を改正する法律(令和7年法律第22号)」は、能登半島地震の被害と近年の気候変動を背景に、道路の災害対策と脱炭素化を強化するものです。公布から6か月以内に施行される予定で、国土交通省が所管します。
今回の改正では、道路の管理・復旧体制を抜本的に見直すとともに、災害時の迅速な啓開(けいかい)や防災拠点整備、カーボンニュートラル対応を一体的に進める仕組みが導入されました。
改正の背景
2024年の能登半島地震では、道路網の寸断が救助・物資輸送の遅れを招き、被災地の孤立を深刻化させました。さらに、気候変動による大規模災害の頻発や、道路の老朽化も顕著です。
国はこうした課題に対応するため、「防災・減災」「国土強靭化」「脱炭素社会」の3本柱を軸に道路行政を再設計しました。改正法では、災害時の道路啓開体制の法定化、自治体間の連携強化、再エネ設備等の道路占用緩和など、柔軟かつ実効的な運用が可能となります。
改正の主なポイント
1. 道路整備の基本理念を新設
道路が「安全・安心で持続的な社会の基盤」であることを明記し、整備・管理を「防災」「脱炭素」「地域連携」の視点から進めることを基本理念として法定化。これにより、今後の道路計画は単なる交通利便性にとどまらず、災害対応や環境政策と一体的に位置づけられます。
2. 「連携協力道路」制度の創設
複数の市町村にまたがる生活道路について、管理・修繕・費用負担を協議により共同実施できる「連携協力道路」制度を新設。
災害時の復旧効率化や、過疎地域での維持管理体制の共有化を狙いとしています。特に小規模自治体の道路管理負担軽減に寄与します。
3. 「道路啓開計画」の策定義務化
複数の道路管理者が連携し、大規模災害発生時の緊急輸送ルート確保を目的とした「道路啓開計画」を作成できるようになります。
これにより、災害時の通行確保を計画的に実施でき、初動対応の迅速化が期待されます。
4. 国土交通大臣による「代行制度」の拡充
被災自治体の要請に基づき、国交大臣が都道府県や市町村に代わって災害復旧工事や自動車駐車場の管理を行うことが可能に。
重要物流道路や防災拠点駐車場の新設・改築も国が代行できるようになり、災害対応の即応性が高まります。
5. 災害応急施設の「占用許可」基準を緩和
従来は道路用地外にスペースがない場合のみ許可されていた災害関連施設の設置について、条件を緩和。
防災倉庫や緊急発電設備などを道路敷地内に恒常的に設置できるようになります。
6. 「道路脱炭素化基本方針」と「推進計画」の新設
国交大臣が「道路脱炭素化基本方針」を策定し、自治体や道路管理者はこれに基づく「推進計画」を作成可能に。
EV充電施設や太陽光発電設備など、再エネ関連施設を道路空間に設置する際の占用許可が緩和されます。
これにより、道路を活用した再エネインフラ整備が全国で加速するとみられます。
7. 地方道路公社に対する国の支援強化
災害発生時、地方道路公社が管理する有料道路などの復旧を、国交大臣が代行できる制度を創設。
高度な技術を要する復旧工事を国が直接実施することで、復旧期間の短縮と安全性向上が期待されます。
実務への影響と自治体・企業の対応策
自治体では、災害時の道路管理協定や連携協力道路の指定に向けた協議体の設置が求められます。道路啓開計画の作成や、地域の防災拠点駐車場の整備計画を早期に進めることが重要です。
また、道路関連業者や建設コンサルタントは、脱炭素化施設(EV充電、再エネ導入、蓄電設備など)の設計・設置支援が新たな業務領域として拡大します。
災害対応とグリーンインフラを両立する「レジリエント・グリーン道路」の整備が、今後の地方インフラ政策の中核となるでしょう。
施行時期とスケジュール
- 公布日:2025年4月16日
- 施行時期:公布から6か月以内に政令で定める日(2025年秋頃見込み)
- 一部の代行制度や脱炭素化方針に関する規定は段階的に運用開始予定。
まとめ
今回の改正は、能登半島地震を教訓に「災害に強く、環境にやさしい道路行政」への転換を明確に打ち出したものです。
自治体・建設業者・再エネ事業者にとっては、新たな協働と事業機会が生まれる一方、計画策定や法的手続の理解も求められます。
今後は、「防災×脱炭素×地域連携」をキーワードに、国・地方・民間が一体となって持続可能な道路ネットワークづくりを進めていくことが不可欠です。